国立大学法人におけるガバナンスの基本的構造

 私たちは、槇野博史学長とその周辺を巡る様々の問題をこのホームページで取り上げてきました。ホームページを閲覧していただいている多くの皆様には、槇野学長が岡山大学の学長として相応しい人物か否かという疑問を共有していただけた思っております。

 私たち「岡山大学を正常化する会」のメンバーは、槇野学長は解任あるいは辞職すべきだと考えていますが、そこには様々な手続きが必要です。そして、それ以前に、現在、岡山大学におけるガバナンスの基本的構造を理解する必要があると思います。そこで、今回は、とりあえず、国立大学法人におけるガバナンスの基本的構造についてまとめることにしました。


ガバナンスとは

 ガバナンス(governanceは、辞書的には「統治、管理、支配」と示されています。この言葉が、一般的になってきたのは、企業が社会に対してコンプライアンス(法令順守)の意識を維持し、機能させ、改善点を見つけ、改善をさせていくのに必要な管理体制が求められるようになった1990年代からとされます。その背景には、様々な企業不正が表面化して、社会問題となってきたことが挙げられます。

 企業を巡るガバナンスは、コーポレート・ガバナンスと言いますが、企業の運営とともにその状況を管理・監督する内部統制、企業のシステムが健全に機能しているかを審査する監査(内部監査と外部監査)などから構成されます。そして、それらの指針となるのが、ガバナンスコードです。


国立大学法人ガバナンスコード

 元来、企業に用いられてきたこれらの概念は、国立大学が法人であることから、その適応となるというのが現在の国の考え方です。そこで、文部科学省、内閣府、国立大学協会が「三者協議会」を作り、国立大学法人ガバナンスコードを令和2年3月30日に策定し、直近の令和4年4月1日付で改訂版が発表されています。それに基づき、国立大学法人は各々のガバナンスコードを作り、そのガバナンスコードに従って大学運営管理が行われているのが現況です。ちなみに、日本私立大学協会も「私立大学版・ガバナンスコード」を発表しています。


国立大学法人ガバナンスコードに示される学長選考等について

 国立大学法人ガバナンスコードについては、インターネットで見ることができますので、皆さんも一度ご覧になってください。

 ここでは、まず、国立大学法人ガバナンスコードで示されている学長の選考や解任等についての記載を何点か示したいと思います。

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3-3 学長選考・監察会議

【原則3−3−1 国立大学法人のミッションを踏まえた明確な理念に基づく責任ある法人の長の選考等】

学長選考・監察会議は、国立大学法人法等に則り、経営協議会の学外委員と教育研究評議会の評議員から同数を選出し構成され、法人の長の選考や解任、大学総括理事の設置の要否の検討、法人の長の業績評価等を担う会議体である。このため、学長選考・監察会議は、自らの権限と責任に基づき、法人の長に求められる人物像(資質・能力等)に関する基準を明らかにするとともに、広く学内外から法人の長となるに相応しい者を求め、主体的に選考を行うべきである。

補充原則

3-3-1① 学長選考・監察会議は、法人の長の選考に当たって、国立大学法人のミッションや特性を踏まえた法人の長に必要とされる資質・能力に関する基準を定め、当該基準を踏まえ、国立大学法人法等の規定に則り、意向投票によることなく、自らの権限と責任において慎重かつ必要な議論を尽くし、適正に選考を行い、基準、選考結果、選考過程及び選考理由を公表しなければならない。

3-3-1③ 学長選考・監察会議は、国立大学法人法に基づき法人の長の任期を審議するに当たっては、国立大学法人のミッションを実現するために法人の長が安定的にリーダーシップを発揮することができるよう適切な期間を検討すべきである。あわせて、国立大学法人における継続的な経営・運営体制の構築のため、法人の長の再任の可否や再任を可能とする場合の上限設定の有無についても適切に検討し、その理由とともに公表しなければならない。

【原則3-3-2 法人の長の解任のための手続の整備】

学長選考・監察会議は、法人の長の選考を行うとともに、法人の長の職務の遂行が適当ではなく引き続き職務を行わせるべきではないと認める場合等においては、任期の途中であっても法人の長の解任を文部科学大臣に申し出る役割も有する。このため、学長選考・監察会議は、予め法人の長の解任を申し出るための手続について整備し、公表しなければならない。

【原則3−3−3 法人の長の業務執行に関する厳格な評価】

学長選考・監察会議は、同会議に法人の長の職務執行の状況報告を求める権限を付与した法の趣旨を踏まえ、法人の長の選任の後も、法人の長の業務が適切に執行されているか厳格な評価を行うべきである。これにより、法人の長の選考の適正性を担保するとともに、その業務執行能力が著しく劣ると認める場合には解任の申出を検討するなど、学長選考・監察会議による法人の長の選考を一過性のものにすることなく、法人の長から独立性をもって、組織としてその結果に責任を持つべきである。

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 このように、学長選考・監察会議(この4月から、従来の学長選考会議はそれに「監察」がつくことになりました)は、学長の選考や解任等に対して非常に大きな権限を持つことになっています。そこには、昨今のいくつかの国立大学学長の暴走から鑑みた抑止政策があると推測されます。

 一方、例えば、「(学長)任期上限設定の有無については適切に検討」と書きながらも、「安定的にリーダーシップを発揮することができるよう適切な期間を検討すべき」としています。従って、学長の任期延長、再延長も学長選考・監察会議の考え次第では可能となり、昨今の広島大学と同様の状況になります。また、教職員の意向投票についても肯定的ではない見解を示していることも気になるところです。


国立大学法人ガバナンスコードに示される監事、内部統制について

 続いて、監事、内部統制について記載を見てみましょう。

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3-4 監事

【原則3−4−1 監事が十分かつ適切に監査業務を遂行できるようにするための体制確保】

国立大学法人は、監事が十分かつ適切に監査業務を遂行し、より効果的・明示的に牽制機能を果たすことができるようにするための体制を整備すべきである。

補充原則

3-4-1① 監事の役割は、国立大学法人のガバナンスの一翼を担うものであり、内部統制の在り方等についても監査対象とすることから、国立大学法人は、監事が適切に監査を行い、その職責を果たすことができるようにするため、監事の学長に対する第三者性・中立性を確保するとともに監事の公正かつ厳正な監査業務を補佐する体制を整備すべきである。

【原則3−4−2 監事候補者の選考】

監事は、国立大学法人法に基づき、文部科学大臣が直接任命することとされているが、その任命に当たっては、各国立大学法人における監事候補者の選考を尊重している。このため、国立大学法人は、常勤監事や学外監事の必置を定めた法の趣旨を踏まえ、監事の役割や求められる人材像等を明確化した上で、適切なプロセスによって選考を行うべきである。

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基本原則4.社会との連携・協働及び情報の公表

国立大学法人は、教育・研究・社会貢献機能を最大限発揮し、我が国、地域の発展のために中核的な役割を果たすため、社会から理解と支持を得るとともに、適切に連携・協働を行っていくべきであり、そのために、情報の公表を通じて透明性を確保すべきである。

また、併せて、国立大学法人の経営、教育・研究・社会貢献活動の安定性・健全性を示す必要があり、自らを律する内部統制の仕組みを整備・実施することで、適正な法人経営を確保するとともに、その運用体制を公表しなければならない。

*国立大学法人は、社会から信頼を得るためには高い公共性を担保し、持続的・継続的に発展できる組織であることを示さなければならない。そのためには、コンプライアンスや内部通報・外部通報等の自らを律する内部統制の仕組みを整備し、それらを確実に機能させ、適正な法人経営を確保するとともに、その運用体制を公表することによって、法人の安定性と健全性を社会に示すことが必要である。

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 ここでは、監事は(学長ではなく)文部科学大臣から任命され、国立大学法人を健全に運営するうえで非常に重要な役割を果たし、国立大学法人は監事が十分に機能できるような体制を作ることが求められていることがわかります。また、情報の透明性の確保とともに自らを律する内部統制についても厳格に要求されています。


次回について

 ホームページをご覧の皆さんには、だいぶ堅苦しい記事となりましたことをお詫び申し上げます。しかし、これらを知ったうえで、現在の岡山大学のガバナンス等の状況はどうなのかということを考えなくてはなりません。次回は、岡山大学の状況について言及したいと思います。

「岡山大学を正常化する会」有志

岡山大学を正常化する会

このホームページでは、皆様に現在の岡山大学の諸問題を事実に基づいてお伝えし、岡山大学を「正常化」するためにはどうすればよいのかを一緒に考えたいと思います。

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